スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

たいせつでたいせつで(184)

 「やめろ!!」
 とうとう切迫が慎重を蹴り飛ばした。クオンは潜んでいた鉄扉を思い切りぶち開けて躍り出る。
 がこん、という金属音に、目を見開いたラウズが振り返った。闖入者へと慌てて向け直された銃口を認め、武道をも身に着けている少年は咄嗟に横へ跳ぶ。
 銃声と同時に閃光が奔り、一瞬だけ遅れてコンクリ床がぱっと火花を散らした。
 クオンは側転の要領で体勢を整え、右手を大きく後ろへ引く。
 掌に握りこんだものをサイドスローでラウズへと投げつけ、前に引かれる重心に逆らわずに踏み出した。
 びし、という打撃音と短い悲鳴。拳銃ががちゃりと床に落ちる。
 落とした武器へ手を伸ばす略取者までの距離を一気に詰め、腹を狙って膝を突き上げた。
 「ぐうッ…!?」
 思い手応えを感じる。
 よろめいたラウズからすばやく一歩引き、今度は胸元へと回し蹴りを放った。男がぐらりと仰向けに傾ぐ。
 が、この隙に拳銃を取り上げよう、と一瞬意識が逸れたのが悪かった。振り切った足をしがみつくような形で掴まれる。
 「っ!」
 引き倒されそうになるところ、クオンは逆に残る足で床を蹴った。体を捻りながら男の手を薙ぎ、くるりと一回移転して降り立つ。キョーコを背にし、次第に引き離しているのは勿論故意にだ。
 「キョーコちゃん?」
 声をかけても少女の気配は動かない。振り返って様子を確認したいけれど、今は敵から目を離すわけに行かなかった。
 ラウズがふらふらと立ち上がる。意外にタフなのか、キョーコの前だからとクオン自身が無意識に手加減しているのか。
 じり、と踏み替えた足に硬重い感触が当たり、銃だと知ったクオンは踵で蹴り飛ばした。
 ラウズが血走った目をクオンに向ける。
 「何だ、お前は…」
 じろじろと不審と不快の視線を浴びせられるが、彼に怯む理由はない。代わりに半歩だけ前に出、どう来られても対応できるように重心を落とした。
 「ん、そう言や、ちらっとだが見たことあるな…」
 おそらく、今日まさになぞらされた苦い記憶の日のことだろう。どうやらあの公園で、キョーコと一緒にいるところを見られていたらしい。
 「その悪魔の仲間か」
 気味の悪い、一本調子の呟きを向けられる。
 「悪魔はあんたの方だろ」
 クオンは低く言い捨て、強い視線をまっすぐに男に向けた。
 「何だと?」
 「遠い日本から連れて来た奥さんを殺したばかりか、罪もないキョーコちゃんにまで酷い仕打ちをして…天使みたいにいい子なのに」
 私情も露に言い切ると、ラウズは憐れむような溜息を吐いた。
 「お前、そいつの仲間じゃないってんなら誑かされてんだよ。そいつもそいつの母親も、人を破滅させる悪魔だぜ?俺はそれに気がついて、世のため人のために退治してやって」
 「あんたの破滅はあんたのせいで、しかも相応ってものだろう」
 少年は口端に泡を吹く男の言葉を冷たく遮る。言い捨てられて男はさっと顔色を変えた。
 「相応?相応だと!?冗談じゃない、俺はこんな所で燻ってるような人間じゃねえんだ。三ヶ国語ペラペラどころか人に教えられるようなエリート様だってんだよ。なのに、俺の運をそいつらが食いつぶしちまうから…俺の能力をもってすればほんとは今頃、そうだ、そいつらさえいなきゃ…」
 声調子がゆらゆらと上下する。筋の通らない言い草がまずます酷くなる。きょろきょろと忙しなく周囲を見回したラウズは、ふと横へ身を屈めた。
 白いビニール袋のまま投棄されているゴミを探り、中から細長いガラス瓶を取り出す。
 「…!」
 クオンの全身が緊張を孕んだのは、ガラスの破砕音がキョーコに与える影響を思ってのことだった。彼がそばにいる時にはどうにか堪えてくれるようだが、いま彼女は彼を認識しているだろうか?
 ニタリと笑った男が、手にした瓶を構造材へと打ちつける。






関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

sidetitleブロマガsidetitle

月刊ブロマガ価格:¥ 300

紹介文:AKADEMIA発行の同人誌を月ごとの記事に分けて収載しておりますので、ご希望の月(=タイトル)を選んでご購入下さい。

ブロマガ記事一覧

購入したコンテンツは、期限なしに閲覧いただけます。

sidetitleカレンダーsidetitle
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
sidetitle最新記事sidetitle
sidetitleカテゴリsidetitle
sidetitle検索フォームsidetitle
sidetitleRSSリンクの表示sidetitle
sidetitleリンクsidetitle

[特定商取引に関する法律に基づく表示]
sidetitleQRコードsidetitle
QR
sidetitleメールフォームsidetitle

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。